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「全部AIに任せる」は失敗する。うまくいく「分担」の型

太田和希
太田和希
株式会社八丁目 代表 / 現役Webエンジニア
AI設計思想業務効率化

失敗する人は、たいてい「線引き」をしていない

「AIを導入したけれど、いまいち使いこなせなかった」という話をよく聞きます。原因を掘っていくと、だいたい同じところに行き着きます。AIに何をどこまで任せるかの線引きをしていないのです。

全部を任せようとすると事故るし、逆に不安で何も任せられないと結局これまで通り。うまくいくかどうかは、能力の差というより「分担の設計」の差でした。

弊社は夫婦2人+幼児の小さな会社で、代表は本業のある現役Webエンジニア。一番足りないのはお金より時間なので、AIエージェント(弊社は Claude を使っています)に作業を寄せて会社を回しています。その中で見えてきた「これはAI/これは人」の分担の型を、業務別に具体的に共有します。

大原則:AIは「下ごしらえと段取り」、人は「判断・承認・関係構築」

細かい話に入る前に、骨格だけ先に。弊社の分担は、突き詰めるとこの一行です。AI=下ごしらえと段取り、人=判断・承認・人との関係づくり。

AIと人の分担の型。上段=AIの担当(探す・集める・まとめる・下書き・記録・決まった手順の繰り返し)、中段=承認ゲート(人)、下段=人の担当(これでいいか決める・外に出すGO・トーンや温度感・関係づくり・次の打ち手)

  • AIが得意なこと:探す、集める、まとめる、下書きする、記録する、決まった手順を繰り返す
  • 人がやるべきこと:これでいいか決める、外に出す前のGOを出す、トーンや温度感を整える、相手との関係を築く、次の打ち手を考える

この線引きさえブレなければ、たいていの業務はうまく分担できます。以下、弊社の4つの業務で「具体的にどこで線を引いているか」を見ていきます。

業務別・弊社の分担のしかた

営業:探す・書くはAI/「送っていいか」は人

AIの担当は、Web検索で候補企業をリストアップし、一覧にまとめ、目的に合わせた文面を下書きし、送信用のバッチに整えるところまで。人の担当は、できあがったバッチを目視でチェックし、狙いと違う先を外し、文面の温度感を直して、「これは送っていい」とOKを出すこと。送信ボタンを押すのは人です。線引きのポイントは、「外に出る瞬間」を人が握ること(→「営業をAIでパイプライン化した実例」)。

経理:記帳の下ごしらえはAI/「任せる範囲」は人が厳しく決める

AIの担当は、会計ソフト(freee)と連携させた記帳の下ごしらえ。人の担当は、任せる範囲をはっきり狭く決めることです。ここは弊社で一番慎重にやっている領域で、以前AIに直接データを突っ込ませたら二重計上になりかけたことがあり、「お金まわりは丸投げしない」と決めました(→「freee×AIで記帳を半自動化した実例」)。お金が絡む業務ほど、AIの担当を狭く・はっきり。

タスク管理:整理・提案はAI/「やる・やらない」は人

AIの担当は、1か所に集約した台帳を読んで「これが手つかず」「これは締切が近い」と整理し、今日やるべき候補を並べること。人の担当は、並んだ候補を見て「今日はこれをやる/これは後回し」と決めること。優先順位という判断は人の仕事です。散らばった情報はAIも整理しきれないので、1つの台帳に集約するのが前提条件になります(→「タスクをGitHubに一元化した話」)。

コンテンツ:企画・下書きはAI/「最終OK」と味付けは人

AIの担当は、SNS投稿や動画の企画・下書きを、ブランドのトーンを覚えさせたうえで量産すること。人の担当は、出てきた案を手直しして最終OKを出すこと。「これは弊社らしくない」という最後の一手は人にしか判断できません。ここでも、外に出す前には人が通します。

分担がうまくいくと、こう変わる

4つを並べると、共通の形が見えてきます。代表が1日でやっているのは、ほぼ「判断」と「承認」だけなのです。

  • 探す・書く・記録する・整理する → AIの担当
  • 送っていいか決める・お金の扱いを決める・トーンを整える・次の打ち手を考える → 人の担当

「1人で会社を回す」というと超人のようですが、実態は逆で、手を動かす作業をAIに預けたから細切れの時間でも回っている、というだけです。1日の流れは「AIエージェントで会社を回す、ある1日」で実況しています。

御社版の「分担表」を作ってみる

この分担は、弊社が特殊だからできるわけではありません。「AIが下ごしらえ、人は判断と承認」の骨格は、業種を問わず引けます。

  • EC・物販:受注整理・在庫チェック・販促文の下書きはAI/発送や返金の確定、クレーム対応の温度感は人
  • 店舗・サービス業:予約対応・問い合わせ返信の下書きはAI/お客さまへの最終返信、常連さんとの関係づくりは人
  • 卸・BtoB:見込み先リストと提案文の準備はAI/送っていい先の判断、商談・関係構築は人

コツは、自社の業務を紙に書き出して、一つひとつに「これはAI」「これは人」の印をつけてみること。特に「お金が動く」「外に出る」「人との関係が絡む」ものには、迷わず人の印を。それが御社の分担表になります。線引きの土台となる考え方は「送信直前に人が承認するという設計」もあわせてどうぞ。

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