
“数字を見る”より“AIに数字を渡す”——生データを自社に貯める計測の作り方

「ダッシュボードを眺めるだけ」で終わっていませんか
アクセス解析を入れて、管理画面のグラフを月に一度眺める。多くの会社の計測は、ここで止まっています。見ないよりずっと良いのですが、AIの時代になって、計測の"本当の価値"が変わりました。
いま効くのはこういう状態です。
「先月、ECの購入率が落ちたのはなぜ? どのページで離脱してる?」——これを AIに自然言語で聞いて、自社のデータから答えさせられる。
これができる会社と、「月次の集計グラフを眺めるだけ」の会社では、意思決定の速さがまるで違います。そして、その差を分けるのは AIの賢さではありません。 AIに渡せる"生データ"を、自社にちゃんと貯めているか——ここだけです。
この記事では、弊社(設立数ヶ月・専任の計測担当なし)が実際に組んでいる計測の構成を全部お見せしつつ、あなたの会社に合う形の見つけ方を書きます。
なぜ「管理画面を見るだけ」では足りないのか
アクセス解析ツールの管理画面は、"見る" ためによくできています。ただ、AIに分析させようとすると壁にあたります。
- 数字が 集計済み で、1件1件の生の行動ログには触れない
- 保持期間 があり、古いデータは消えていく
- 会計・広告費・在庫など 他のデータと結合できない
- そもそも 外に取り出しにくい(AIに渡す口がない)
AIに「なぜ?」を分析させるには、集計されたグラフではなく、「誰が・いつ・どのページで・何をしたか」という 生のログそのもの が要ります。だから弊社は、計測の最終目的を「グラフを見る」ではなく、生データを自社に丸ごと貯める ことに置いています。
弊社の計測、全部お見せします

弊社の構成はこの4段です。むずかしく見えて、やっていることはシンプルです。
① 集める(サイトに計測を仕込む) 自社サイトは、計測タグを コードに直接書いて います。そして、弊社のWebゲームのように "実際に何回遊ばれたか" が大事な数字は、ブラウザ側ではなく サーバ側から取ります。ブラウザの計測は広告ブロックなどで わりと欠ける ので、「本当の数字」はサーバで押さえるのが鉄則です。
② 貯める(生データを自社のデータ基盤へ) アクセス解析(GA4)から、1件1件のイベントを自動で自社のデータ基盤(BigQuery)に流し込みます。この連携は無料・毎日・手入力ゼロ。会計ソフトの数字やインフラのコストなど、Web以外のデータも同じ基盤に丸ごと 集めます。ポイントは、すべてが1か所に、生のまま貯まる ことです。
③ 意味づける(KPIの形に整える) 自社のデータ基盤の中で、生ログを「売上」「問い合わせ数」「継続率」などの 見たい指標の形に自動で整えます。
④ 配信・監視する(見える化+健康チェック) 整えた数字はダッシュボードで見えるようにし、さらに、届いたデータの鮮度や異常を Slack へ自動通知 します。「今日のデータはちゃんと届いた?」「異常な数字が出ていない?」を自動で見張るイメージです。KPI(成長しているか)とは別に、サービスの健康状態(ちゃんと動いているか)を分けて見張るのがコツです。
この形にしておくと、最後にいちばんおいしいことが起きます。自社に生データが丸ごと揃っているので、そこにAIをつなぐだけで「自然言語で自社データに質問できる」ようになります。ここが、いまやる価値のある投資だと考えています。
論点:「タグマネージャー(GTM)」か「コード直書き(gtag)」か

計測タグの入れ方は、大きく2通りあります。ここで迷う人が多いので、正直に書きます。
- A. タグマネージャー(Google Tag Manager=GTM):管理画面でタグを一元管理する。コードを触らずに追加・変更できる。
- B. コードに直接書く(gtag):サイトのコードに計測を書き込む。
弊社(自社サイト)は B=コード直書き にしています。理由は、
- 触るのが 自分(エンジニア)だけ なので、管理画面をもう一つ増やす意味が薄い
- コードの履歴(Git)で計測も一緒に管理 でき、いつ・何を変えたかが全部残る
- ページが 軽い
- ゲーム内の細かいイベントは、コードから直接送るほうが素直
……ですが、ここが大事なところで、あなたの会社では A が正解かもしれません。 たとえば、
- サイトが ノーコード(Shopify・WordPress・BASE 等)でコードを触りにくい
- 広告のタグ(Meta・LINE・Google 等)を複数 貼りたい
- 社内にエンジニアがいない/運用は非エンジニアがやる
こういう場合は、管理画面で一元管理できる タグマネージャー(A)のほうが圧倒的に楽で、現実的です。
つまり「GTM か gtag か」に唯一の正解はなく、誰が運用するか・コードを触れるか・広告をどれだけ回すかで変わります。
いちばん効くのは「データを自社に丸ごと貯めるか」
タグの入れ方(A/B)は入口の話で、もっと効くのは「生データを自社に丸ごと貯めるかどうか」です。
| 管理画面を見るだけ | 自社に丸ごと貯める(弊社の場合) | |
|---|---|---|
| できること | 決まったグラフを見る | AIに自由に質問できる |
| データの結合 | むずかしい | Web+会計+広告+在庫を 1か所で結合 |
| 過去データ | 消える期間がある | 捨てずに貯められる |
| AI活用 | 渡しにくい | そのまま渡せる |
「チャネル別の広告ROIを出して」「解約した人に共通する行動は?」——自社にデータが丸ごとあれば、こういう問いをAIに投げられます。 逆に無いと、AIがどれだけ賢くても、渡す材料がありません。
コストを心配されますが、多くの中小規模ならデータ基盤の費用はほぼ無料〜月数百円。アクセス解析からデータ基盤への連携そのものも無料です。「重厚な仕組み」ではなく「安い保険」に近い感覚で始められます。
あなたの会社に合う形は?(5つの問い)
構成は会社ごとに変わります。次の問いに答えると、必要な形が見えてきます。
- サイトは コードを触れますか? それとも ノーコード ですか?(→ 直書き or タグマネージャー)
- 広告を複数の媒体 で回していますか?(→ タグマネージャーが効く)
- Web以外に見たいデータ(会計・広告費・在庫・POS)はありますか?(→ データ基盤で結合)
- 計測は「見て終わり」ですか? それとも AIに使いたい ですか?(→ 自社に丸ごと貯めるか)
- 誰が運用 しますか? 社内にエンジニアはいますか?(→ 入れ方と運用の設計)
ざっくり言えば、"見るだけで十分" なら 管理画面+無料ダッシュボードで軽く、"AIに使って意思決定を速くしたい" なら 自社に丸ごと貯める。会社のフェーズと目的で、最適な"重さ"は変わります。
始めるときの注意点
- 個人情報・同意 の扱いに注意(改正個人情報保護法。必要ならクッキー同意も)
- 最初から全部を計測しない。まず1〜2個の "見て動ける指標" から
- 「生データを貯める」=「全部を毎日見る」ではありません。貯めておいて、必要なときにAIと掘る
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